さえの音響・音楽教室

音響・音楽系の話やボイスチェンジャーの情報まとめてくよ!

声のしくみ

f:id:saeokuri:20191215174257p:plainおはよう!!! ( ᐢ˙꒳​˙ᐢ ) 小栗さえだよ~~~!!

ボイチェンアドベントカレンダー10日目!声の仕組みとかについて解説してくよ!

adventar.org

今回はボイスチェンジャーの話ではなく、地声を女性に寄せるための仕組みと方法について紹介します。
両声類を目指す人にも必要な知識になるので、地声を鍛えたい人は要チェック!

諸注意

声楽で扱われる用語の定義は音楽ジャンルなどにより大きく揺れており、統一が図られていません。(「JPOPの世界ではこう解釈しています」みたいな)
ネットで見つかる記事や動画で出てくる「鼻腔共鳴」や「ミックスボイス」などの単語はその人その人で定義が違うという前提で捉えると混乱せずに済むのでお勧めです。
みんな適当なことを言っているわけではなく、定義が統一されないから皆困っているのです。(๑-﹏-๑)

今回はそのような定義揺れの大きいキーワードは極力省いて、解剖学や音響学の定義を借りて説明しようと思います。

発声の仕組み

人間の声は肺から空気が送られ、声帯により咽頭音源(voice source)が作られ、声道と口腔や鼻腔などの共鳴腔によって音色が形作られます。
管楽器で言えば、声帯はリード、声道などの共鳴腔は楽器のボディ(共鳴体)にあたります。

声のピッチ

ピッチ(音高)は主に以下の要素などで決まります。
特定の器官(声帯など)の動きだけで決まっていないということが重要です。

  • 呼気の圧および速さ
  • 声門閉鎖の強さ、声帯の薄さ
  • 共鳴腔(声帯)の形状(広さ、長さ)

女性や子供の場合は声道(共鳴腔)が男性より短く、高いピッチが出しやすい構造になっています。 (高音を出すための筋肉が発達しているとかではないです)

共鳴腔が狭くて短いほど高音が出やすいというのは、管楽器をイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。

声 - Wikipedia

声のフォルマント

声のフォルマントは共鳴腔の形で決まります。
基本的に共鳴腔が広く長いほど低周波が増幅されやすく、狭く短い方が高周波が増幅されやすくなります。声の野太さと首の長さには相関があるようです。

声道が短くて狭い女は男性に比べ、第一フォルマントが12%増、第二フォルマントが17%増、第三フォルマントが18%増と、高周波帯になるほど増幅された波形になります。

これはリサンプリング(3日目の記事で書いています)によって声の波形を縮めた場合に、同じように高周波になるほど増幅されやすくなる特性と一致しており、リサンプリングによる性別変更に近いフォルマントシフトが行える原理になります。

参考:歌声の科学

歌声の科学

歌声の科学

 

発声に関わる筋肉

発声に関わる筋肉の一部を紹介します。
以下の文献を参考にしています。

福島県立医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座 - 喉頭の臨床解剖 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/112/2/112_2_86/_pdf/-char/en

声帯緊張筋

声帯緊張筋と呼ばれる輪状甲状筋は、声帯を緊張させて高音を出すときに使う筋肉です。

輪状甲状筋を収縮させると甲状軟骨を動かし、結果的に声帯を薄く伸ばす方向に操作します。
声帯が薄く伸びると呼気による振動がしやすくなり、咽頭音源の周波数が高くなります(つまり高音が出ます)。

声門閉鎖筋群

発声音のアタック(明瞭さ)などに関わる筋肉です。
声門閉鎖筋群には、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋、披裂筋があります。

声門閉鎖筋群を鍛えてアタックの調節が正しくできると発声が聞き取りやすくなり、滑舌も良くなります。
また甲状披裂筋は地声感(チェストボイス)を高めるときに使う筋肉です。

フォルマントに関わる筋肉

男性が女性のフォルマントに近づくには、声道を短くする必要があります。
しかし声道とは音源の発生場所である咽頭(声帯)から舌根あたりまでの空洞の名称で、声道に対応する筋肉があるわけではありません。

そこで声道を短くするアプローチとして、以下の筋肉を使い咽頭を持ち上げるという方法が取れます。

  • 茎突舌骨筋(Stylohyoid muscle)
  • 茎突咽頭筋(Stylopharyngeus muscle)
  • 顎二腹筋(Digastric muscle)

一般的には発話や歌唱に必要な筋肉ではなく、主に嚥下(ものを飲み込む動作)を補助する筋肉となるので、日本語での詳しい解説やボイトレの記事などは見つからないと思います。

以下の文献(英語)にて仕組みとトレーニング方法について解説されています。

Shortcut to female voice

長くなるので、こちらの詳しい和訳は別記事にまとめようかと思います。

声区について

声楽には声区という概念があり、地声感の強いチェストボイス(というか地声のこと)、裏声と言われるファルセット、地声感を保ちつつ高音を出すヘッドボイス、喉を鳴らしながら発声するエッジボイス、チェストボイスとファルセットの声区を融合させたミックスボイスなどがあります。

声区は歌唱法の話なので、女声とはあまり関係がありません。
例えば、一般的な女性はミックスボイスを使って発音しているわけではなく、ピッチとフォルマントの高いチェストボイスで発音しています。

女声になるためにミックスボイスは必要?

ミックスボイスを「声区融合を使いアタック感のある裏声を出す発声方法」と定義するならば、必須ではありません。
フォルマントを変えずに地声感のある高音を出す形になるため、「中性的な声」や「少年声」がゴールになります。

ミックスボイスをマスターして、上記のフォルマント変化まで加えることができれば、「済んだ芯のある女性の声」になると思います。

女声に一般的なボイトレは有効?

高音を出すために輪状甲状筋を鍛えるトレーニングは有効です。
腹式呼吸や滑舌のためのトレーニング、ピッチ調整など歌唱技術に関わるトレーニングは必須ではありません。

フォルマントを変化させるためのボイストレーニングは一般的なボイトレにはおそらく存在しないため、性転換に関するキーワードで調べてみることをお勧めします。(今後の記事で取り上げてみようかと思います)

おわりに

男性がピッチを高くするためには、声道の長さというハンデを補うレベルで輪状甲状筋を鍛える必要があるので、実はかなりの筋肉を必要とします!
またフォルマントを上げるための声道を短くするアプローチも、咽頭を常に無理やり持ち上げるという方法になるので、こちらも相当な筋肉を必要とします。

完璧な女声を手に入れたとき、首回りの筋肉はムキムキになってる可能性が高いですね?⸜(๑’ᵕ’๑)⸝?

www.ymm.co.jp (特に女声とは関係ない書籍です)

次回は「吐息感や息遣い」について解説したいと思います!お楽しみに〜〜

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